株式会社ホモ・サピエンス

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イベント 2025.03.02

【開催レポート】スパイスランド・ポンセ一周年記念マーケット開催

「パッカ~ン!」
2025年1月26日、午後12時。
大津市中央大通りにあるスパイスランド・ポンセに、大人も子どもも混ぜこぜの、大きな声が響き渡りました。

スパイスランド・ポンセは、“おおつはもっとおもしろい!”をコンセプトに活動している任意団体OtsuLivingLabと株式会社ホモ・サピエンスの活動拠点であり、“ローカルカルチャーと人間の交差点”をうたう、まちの飲食店です。
昼はカレー、夜はスパイスメニューに町中華。
JR大津駅、京阪びわ湖浜大津駅のどちらからも徒歩7分の距離に位置し、気軽に立ち寄り、また来たくなるメニューを取り揃えています。

翌日に誕生日をひかえたこの日、スパイスランド・ポンセでは『スパイスランド・ポンセ一周年記念マーケット』が開催されました。滋賀県下の様々な店舗が勢ぞろいしてポンセの一周年を共に祝う様子を、フリーライターのHONJOがお届けします。

メンバ―はご覧の9店舗です。

大津市を中心に活動するアウトドアコーヒースタンド TAKIBITO COFFEE
瀬田唐橋のたもとにあるカフェ cafe&gallerySpoons
守山市を拠点に全国各地でマルシェ出店を続けるお菓子屋さん MANMA
長浜市西浅井町から世界を目指す兼業農家集団 RICE IS COMEDY
滋賀県を代表するトラックメイカーCarefreemanが手掛けるローカルフードストア MUNCH!
近江八幡市から湖東地域を中心に活躍するアパレル集団 極東paper store
大津市石山で今日もお湯を沸かし続けるお風呂屋さん 容輝湯
大津市膳所の有名店鶏こうを引き継いで三月にオープン予定の焼鳥屋 宴
滋賀県内のマルシェやマーケットを中心に活動するカフェ macocafe

店主の梅原浩之いわく、“それぞれのローカルで活躍する”お店です。

“ローカル”という言葉を英和辞典で調べてみました。
Localとは、『その地方の、地元の』『各駅停車の/短い区間の』『局部の』を指す形容詞とあります。
つまり、それぞれのローカルで活躍するということは、それぞれの地元で活躍している店舗たちということです。

しかし、少し立ち止まって考えてみたい。
ローカルという言葉で様々なモノやコトをまなざす時、もっと多くの意味が含まれている気がしませんか。

午前11時。
店舗の前には、子どもの背の高さくらいの煙突が三本並んでいました。
RICE IS COMEDYのゲリラ炊飯です。

RICE IS COMEDYは、長浜市西浅井町で『米作りは喜劇だ』というコンセプトをもとに楽しみながらコメ作りをおこなっている兼業農家集団です。ゲリラ炊飯とはその名のとおり、野外で炊いたご飯をおにぎりにして、その場に居合わせた人々へ無料でふるまうというもの。その活動は西浅井町にとどまりません。

RICE IS COMEDYの大谷耕平さんに、ローカルってなんでしょう? と尋ねてみました。すると『(ローカルは)帰ってくる場所』と、答えてくれました。西浅井町でコメ作りをつづけながら全国各地を飛び回るRICE IS COMEDYの皆さんにとって、ローカルとは自身のホームであり、戻ってくる場所なのかもしれません。

容輝湯の藤内ユキナさんは『行かないと分からないもの』と答えてくれました。ご自身も各地のローカルイベントに参加するなかで実感を得たというその感覚は、訪れた地域特有の雰囲気や空気によるところが大きいのでしょう。

スパイスランド・ポンセのある滋賀県大津市、JR大津駅前周辺には、かつて、江戸時代の五街道のひとつである東海道に位置する宿場町『大津宿』がありました。京都の入り口であり、湖上を渡る物資の玄関口でもあった大津宿は京都や大阪をしのぐほどに栄え、江戸時代中期は商業活動も活発で旅人や商人の往来も多かったといいます。

ポンセは、JR大津駅前からまっすぐに琵琶湖をのぞむ中央大通りに面しています。
宿場町としての活気があった江戸時代から数百年。鉄道が整備された今ではその役割も薄れ、現在の大津駅前周辺には、滋賀県庁や大津地方裁判所などの公的機関が集中しています。そのような変化から、今では働きに来る人が多いまちでもあるために、平日と休日では、人通りの多さもがらりと変わります。

そんな中央大通りの日曜日。イベントのうわさを聞きつけた高校生や小学生の子どもたちが、もうもうと煙の立つ煙突と大きな羽釜を興味深そうに見つめていました。

「みなさ~ん、もうすぐ、炊き上がりま~す!」
RICE IS COMEDYの中筋雅也さんが、大きなしゃもじを掲げながら来場者へ呼びかけました。
「ふたを開けたい人、手をあげて!」
すると、集まっていた子どものほとんどが手をあげました。手をあげた全員で三つの羽釜をぐるりと囲み、いよいよ羽釜のふたをみんなで開ける『パッカ~ン!の儀』です。

「5、4、3、2、1、パッカ~ン!」
大人も子どもも混ぜこぜの大きな声が、中央大通りに響き渡りました。

炊き立てのご飯は、RICE IS COMEDYの皆さんによって手のひらサイズのおにぎりになり、来場者へひとつずつ手渡されていきます。店舗の前にはいつしか長い行列が。子どもたちはひとつ食べてはまた行列に並び、食べてはまた並び。なかには、五個も食べたとうれしそうに手を広げてくれる子も。

店の前に座っておにぎりを頬張る子どもたち。マーケットを出たり入ったりしながら笑う大人たち。普段の中央大通りではあまり見かけない光景が、そこにありました。

ローカルっていったい、なんだろう。
炊き立てのご飯と楽しい時間を分かち合う皆さんの姿を見ながら、考えます。

ローカルフードストアMUNCH!のCarefreemanさんは、『(ローカルとは)尖っていること』と、答えてくれました。その言葉には、メジャーシーンに迎合することなく自分たちの信念を追求するというまっすぐさが感じられます。

近江八幡からやって来た極東paper storeは、今回が大津初出店です。自分たちが楽しみながらものづくりを続けることで多くの出会いが生まれ、その出会いが自分たちを様々なところへ連れていってくれたのだとメンバーのタイソンさんは話しました。

MANMAのちひよさんは約10年間、全国各地のマルシェで出店を続けて来られ、昨年には守山市に実店舗をオープンされました。今でもマルシェ出店を続けるなか、出店者同士の繋がりがこれだけあたたかいのは滋賀ならではだと感じているそうです。

RICE IS COMEDYが準備した九升のご飯は全て来場者のお腹のなかへおさまって、イベントが落ち着いたころ、羽釜を下ろしたかまどの残り火を、出店者の皆さんが囲みました。

もしかしたら、ローカルとは、まさに“今、ここ”。
今、ここに立って行動することそのものかもしれません。
それぞれの“今、ここ”から、明かりを灯す。
しゅくしゅくと自分の周囲を照らし続けるその姿勢をローカルと呼ぶのだとしたら。

光は少しずつ重なることで、より広い範囲を照らせます。
かまどに手をかざしながら話し込む皆さんの姿に、それぞれの灯した明かりが重なり合う瞬間を見た気がしました。

OtsuLivingLabはこれまで、大津で活躍している多くのプレイヤーと出会い、プレイヤー同士を繋げる取り組みを続けてきました。すでに“今、ここ”に立っている人たちが繋がり合うことから生まれるもの、人と人との繋がりそのものを大切にしてきたのです。株式会社ホモ・サピエンスは、そこから生まれてくるものを様々な事業を通じて社会に実装する役割を担っています。

そんなOtsuLivingLabと株式会社ホモ・サピエンスのコンセプトショップとして、スパイスランド・ポンセが一周年記念にマーケットをひらいた理由がここにあるともいえるでしょう。

ポンセは美味しいまちの飲食店、OtsuLivingLabや株式会社ホモ・サピエンスの活動拠点にとどまらず、これからも多くの人と出会い、繋がり、まちとかかわり続けていくのです。ポンセに来れば面白い人、面白いコトにきっと出会える。そんな期待感に満ちた明かりで、ここ、中央大通りから大津のまちを照らすのです。

店の前でおにぎりを頬張った子どもたちが、いつかポンセを自分たちのアジトにするかもしれない。マーケットをのぞいた大人のなかに『おもしろそう、わたしもやってみよう』という人があらわれるかもしれない。

2024年1月27日。
大津中央大通りに灯ったひとつの明かりは、今、明かりを灯そうとするあなたのことも照らしている。
通りに面した大きな窓から、中をのぞいてみてください。

about
スパイスランド・ポンセ
住所:滋賀県大津市中央2-4-23 zensapobldg 1F
TEL:077-522-6530
instagram

予約:可 電話または下記予約サイトからお問い合わせください。
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Writer:HONJO

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